「足元」の透けから目を背けずに ―― 割れ窓理論と「ルビンの壺」が導く生花祭壇と人生の美学

#175
【この記事でわかること】
生花祭壇の足元の透け防止と『ルビンの壺』に学ぶネガティブスペースの重要性、生き方の整え方を解説。

不器用さんこと私は先日、課員の方が作成した生花祭壇を葬儀式場に搬入しました。

搬入設置しながら、搬入している生花祭壇にどこか物足りなさを感じていました。搬入設置し終わってから最終確認をした際、遠目からではとても綺麗な出来栄えと感じられました。施行担当者からも「とても良い」との感想ではありましたが、近づいて見てみるとあちらこちらが透けて見え、貧相な印象になってしまっています。

【細部への違和感】遠目には綺麗な出来栄えに潜む「足元」の透けとほころび

犯罪心理学などに「割れ窓理論」という考え方があるそうですが、建物の窓ガラスが1枚割れているのを放置すると全体が荒れていくように、一見小さく見える細部の隙間やほころびが、近づいたときの作品全体の印象や信頼感を左右してしまうのかもしれません。

どうしても私には花の足元の処理が足りていないように感じられました。その点を施行担当者と話し合った結果、少し修正を加えることになりました。

【ネガティブスペースの美学】「ルビンの壺」が教える余白と背景を整える重要性

多分その生花祭壇を作成された方は、花の頭の部分にしか意識がいっておらず、花の足元の見え方に気を配れていなかったのではないかと私は思いました。

心理学に「ルビンの壺」という図形があります。人は意識しないと主役である「花(図)」ばかりに目を奪われ、背景や土台となる「余白や影(地)」を見落としてしまいがちになるようです。

花を引き立たせるためにはネガティブスペースをいかに綺麗に整えるかも重要なのではないかと私は考えています。とくに最近の規格の小さい生花祭壇においては大切なポイントではないだろうかと考えています。

【シャドウとの対峙】自らの弱さや「足元」から目を背けずに整える真の強さ

人の人生においても同じようなことが言えるのかもしれません。

過去の挫折や自分自身のいたらない部分、要するにネガティブな部分から目を背けた状態で、いくら自分をよく見せようとポジティブな考え方をしても、それはまるで張り子の虎のような状態であり、本当の意味でのポジティブ思考にはならないのではないかと私は思います。

ユング心理学では、自分が隠したい弱さや不都合な部分を「シャドウ(影)」と呼び、それから目を背けずに受け入れることで初めて人間として成熟すると言われているそうです。また、社会学においても、人の本当の強さは完璧を装うことではなく、自らの弱さや不完全さ(ヴァルネラビリティ)を認めることから生まれると語られているようです。

足元の透けた部分から目を背けずに手を加えることで祭壇が美しく引き締まるように、自分自身の未熟さや過去の傷といった「足元」から目を背けず、丁寧に向き合って整えていくこと。それこそが、人の生き方における「本当の強さや美しさ」につながるのではないでしょうか。

生花祭壇と人生は同じ成り立ちなのかもしれません。

今回のまとめ

【足元とネガティブスペースを整え作品と人生に真の強さを宿す】

#割れ窓理論 #ルビンの壺 #ネガティブスペース ── [不器用職人のキーワード集(五十音順)はこちら] 

本日の花言葉

10月12日の誕生花:ヘレニウム(ダンゴギク)

花言葉:「寛大な心」「涙」「相手を引き立てる」

【関連記事】